『歎異抄(たんにしょう)』とは、鎌倉時代に活躍した親鸞聖人の言葉の数々を、弟子の唯円が書き記した書物で、日本で最も親しまれている仏教書といわれます。
その『歎異抄』の魅力を、初めての人にも分かりやすく伝える「歎異抄大学」(第9回)が、令和8年4月19日、京都府最大の展示施設「京都市勧業館・みやこめっせ」(京都市左京区)で開催されました。
テーマは、「歎異抄から学ぶ『なぜ生きる』」。
メインのイベントは、13万部のベストセラー『歎異抄ってなんだろう』の著者であり、浄土真宗学院・学長の高森光晴先生の講演です。時代を超えて読み継がれる『歎異抄』の珠玉の名言の数々から、人はなぜ生きるのかという永遠の問いに迫る、毎回、好評の講演です。
さらに今回、見逃せないのが、100万部突破のベストセラー『なぜ生きる』(伊藤健太郎、明橋大二共著)を原作としたアニメ映画『なぜ生きる――蓮如上人と吉崎炎上』の劇場公開10周年を記念した特別ステージです。映画の主人公・蓮如上人の声を演じた俳優・里見浩太朗さんが特別ゲストとして出演し、制作中のエピソードや歌を披露してくれました。
ほかにも『歎異抄』を語り合う哲学ブースやパネル展示、アニメ映画、書籍『歎異抄をひらく』の紹介コーナーなど盛りだくさんで、3000人を超える来場者は、生きる指針を見つめ直す学びの多い一日となりました。
では、具体的に内容を見てみましょう。

劇場公開10周年!映画『なぜ生きる』特設展示


入り口を入ってすぐ目に飛び込んできたのが、アニメ映画『なぜ生きる――蓮如上人と吉崎炎上』の紹介コーナーです。
劇場公開からちょうど10年を迎えたことを記念した特設展示で、映画に登場するキャラクターの大型パネルが正面に並んでいました。
蓮如上人とは、親鸞聖人の教えを正確に、日本全国に広められた方として有名です。
その蓮如上人の声を演じた俳優・里見浩太朗さんの声優初挑戦のエピソードや、里見さんが月刊誌に寄せたインタビュー記事が大きく展示されました。芸能生活70年を振り返る内容に、来場者の多くが見入っていました。
パネルの前では記念撮影を楽しむ方が後を絶ちませんでした。今なお愛されている映画ならではのことでしょう。
新しくなった「歎異抄を読む」展示

歎異抄大学の定番コーナー「歎異抄を読む」展示が、今回リニューアルされました。
ベストセラー『歎異抄をひらく』にも掲載されている、広島の書家・木村泰山師による書が大きく展示され、今回から新たに「意訳」が加わりました。
原文だけでなく、現代語訳も併せて展示されたことで、「歎異抄って難しそう」と感じていた方でも内容に触れやすくなりました。有名な「悪人正機」の章など、歎異抄の核心に迫る言葉が、泰山師の書とともに会場の雰囲気を奥深いものにしていました。
「世界が語る歎異抄」コーナー&国際トークセッション

「世界が語る歎異抄」のコーナーでは、海外の方が歎異抄と出会い、人生が変わっていった様々なエピソードが紹介されていました。
また海外からの参加者による「国際トークセッション」も開催。文化も言語も異なる国の人たちが語る歎異抄の魅力は、「日本人がまだ気づいていない歎異抄の真価を、海外の方が教えてくれた」と、日本人の来場者の心に強く響いたようです。
令和のマンガ制作体験&プロ漫画家の実演

前回に引き続き設けられたマンガ制作体験コーナーも好評で、子どもも大人も実際にペンで描いて楽しんでいました。プロの漫画家による実演(写真)も行われ、来場者も身をのり出して、見入っていました。
今回の舞台は「宇宙」!ケモノガタリ&哲学カード


「ケモノガタリ」は、ライオンとヒツジとシカの3匹のキャラクターたちが生きる意味を語り合う「脱力系 哲学エンターテイメント」。歎異抄大学ならではの人気企画です。日本の古典文学や哲学をベースにしつつ、親しみやすい形で「人生の大事な問い」について考えるきっかけを提供しています。
今回のテーマは「宇宙」。壮大な宇宙空間を描いたパネルを背景に、「広い銀河の片隅で、僕たちはなぜ生きるのか?」の問いについて、講座やディスカッションがなされていました。「なぜ人命は地球より重いのか?」と大きく書かれたパネルの前で、来場者が思わず立ち止まって考え込む光景も見られました。
キャラクターと一緒に記念撮影できるコーナーには列ができるほどで、新商品のキーホルダーとクリアファイルも好評でした。
「哲学カード」は、ケモノガタリが手掛ける会話型のカードゲームで、今回も人気を集めていました。深いテーマを扱いながら、初めての人同士でも、自然と会話が弾むこのカードは、コミュニケーションツールとして最適で、参加していた教育関係者からも絶賛されていました。
書籍コーナー:話題の新刊&ミリオンセラー著者のサイン会

書籍販売コーナーにも注目のトピックが並びました。
哲学者・伊藤健太郎先生の著書『私たちは、なぜ生きるのか』下巻が、この日発売となりました。上巻の発売以来、続刊を待ち望む声が多く寄せられていたこともあって、多くの方が手に取り、また、サイン会には長蛇の列ができていました。
書籍購入者には、ミリオンセラー『なぜ生きる』の読者の感想を1冊にまとめた『感想集』がプレゼントされました。「出会えてよかった」「涙が止まらない」「読み終わったら、生んでくれてありがとうと言いたくなった」、そんな読者の声が詰まった1冊で、手に取った来場者からも好評でした。
京都限定!歎異抄大学オリジナル生八ッ橋&フォトスポット
京都に来たお土産にと、歎異抄大学オリジナルパッケージの生八ッ橋(井筒八ッ橋本舗「夕子」)が大好評。購入者は特典としてもらえる『歎異抄』原文のカード(全6種類)を大事そうに受け取っていました。
桜と和傘を使ったフォトスポットでは、京都らしい彩りの中で多くの来場者が撮影を楽しんでいました。
飲食スペースとキッチンカーが盛況

地下1階には、参加者の皆さんがほっと一息つける飲食スペースが設けられていました。キッチンカーや出店が並び、会場内に美味しい香りが漂っていました。
挽きたて淹れたてのコーヒーやフルーツサンド、1枚1枚丁寧に焼き上げる本格的なクレープを提供するキッチンカーや、体にやさしい和食弁当、ハンバーグやオムライスなどの洋食弁当、パンセット、マフィンなどの出店に、長い列ができていました。
メインイベントまでの時間にコーヒーやクレープを味わいながら、参加者同士で感想を語り合ったり、ご家族でくつろいだりする姿があちらこちらで見られ、和やかな交流の場となっていました。
講座スペース「苦しくとも、なぜ生きる」


講座スペースでは、哲学者や精神科医、弁護士や国語教諭、浄土真宗学院上席講師などが次々と登壇しました。その1つを紹介しましょう。
「苦しくとも、なぜ生きる」をテーマにした伊藤健太郎先生の講演では、誰もが抱える苦しみや悩みの根本原因と、その解決の道筋が分かりやすく語られました。
人は、どうすれば本当の幸せになれるのか。欲を満たし続ける「快楽主義」も、欲を無くそうとする「禁欲主義」も、現実的な解決にはなりません。仏教では第3の道として、苦しみの波がそのまま喜びに転じ変わる「大悲の願船(だいひのがんせん)」に乗せられる幸せが教えられています。これこそが『歎異抄』に説かれる「摂取不捨の利益(どんなことがあっても変わらない幸せ)」であり、この幸せになることこそが人生の目的であると明示され、参加者は深くうなずきながら聞き入っていました。
メインイベント:高森光晴先生の講演――なぜ生きると『歎異抄』

この日のメインイベントである歎異抄講演は、3階の講演フロアで午後1時25分から開催されました。
浄土真宗学院・学長で、ベストセラー『歎異抄ってなんだろう』の著者である高森光晴先生の歎異抄講演は、当日席が大幅に追加され、『歎異抄』の関心の高さが伝わってきました。
演題は「なぜ生きると『歎異抄』」。『歎異抄』後序の「煩悩具足の凡夫・火宅無常の世界は、万のこと皆もってそらごと・たわごと・真実(まこと)あることなきに、ただ念仏のみぞまことにておわします」のお言葉を通して、人間の本当の姿と人生の目的について話されました。
私たちは何のために生まれ、苦しくともなぜ生きねばならないのか、誰もが知りたい問いに答えられたのが親鸞聖人であり、その教えが『歎異抄』のこの金言に明らかにされていることを解説されました。
欲を満たすことばかりを考え、いつ何が起きるか分からない不安な世界に生きている私たちには、苦しみや悩みが絶えません。だからこそ親鸞聖人は、「万(よろず)のこと皆もって、そらごと・たわごと・真実(まこと)あることなし」と仰り、この世には本当の幸せ(まこと)はないと断言されています。
しかし、だからといって悲しむことはない。私たちは苦しむために生まれてきたのではなく、「ただ念仏のみぞまことにておわします」とあるように、阿弥陀仏の本願によって誰もが本当の幸せになり、人間に生まれてきたことを心から喜ぶことができる。それこそが本当の人生の目的であると、力強く締めくくられました。
名優・里見浩太朗さんがスペシャルゲストとして出演
講演後には、映画『なぜ生きる――蓮如上人と吉崎炎上』の劇場公開10周年を記念した特別企画があり、俳優の里見浩太朗さんがスペシャルゲストとして登壇。この映画で初めて声優に挑戦したという里見さんが、制作当時のエピソードを語りました。
また、蓮如上人の法話のシーンを、ステージで実際に朗読して演じ、約500年前の戦乱の世に、「人はなぜ生きるか」を明らかにするため命を懸けた蓮如上人の姿が、名優の重厚な声を通して会場によみがえりました。
最後に、歌手としても活躍してきた里見浩太朗さんが、ステージで、「あゝ人生に涙あり」と、「素晴らしき人生」を披露し、90歳とは思えない張りのある甘い歌声が会場内に響き渡りました。
「あゝ人生に涙あり」の涙は、決して悲しみの涙ではなく、事が成就したあとの喜びの涙。「素晴らしき人生」は、夫婦が、いい人生を送りたいという願いを込めて作られた歌、という曲紹介にも、皆さん心を動かされていました。
第9回「歎異抄大学」は、節目にふさわしい充実した内容で幕を閉じました。次回は、令和8年9月13日(日)、「東京ビッグサイト」での開催が予定されています。
