歎異抄大學in 東京ビッグサイト
イベントリポート

『歎異抄』の魅力を初心者にも分かりやすく伝える『歎異抄大學』が、令和5年5月14日、日本最大の展示施設「東京ビッグサイト」(江東区)で開催されました。

「お台場」の愛称で知られる人気スポットに登場した、『歎異抄』を誰もが大いに学べる「歎異抄大學」。そこには講演会や映画が上映されるメインステージと9つの講座会場、展示や体験コーナーなどが設けられていました。

9時半の開場から入場者は引きも切らず、午後には、「人はなぜ生きるのか」という最も大事な問題について、歎異抄解説書の決定版、60万部を超えるベストセラー『歎異抄をひらく』の著者・高森顕徹先生のご講演がありました。

目次

50を超える講座を用意

この歎異抄大學は今回で3度目。

首都圏では昨年5月の幕張メッセ(千葉市)でも行われました。

東京ビッグサイトでは、メインステージと9カ所で、『歎異抄』の仏語が学べる約50の講座が開催されました。

仏教のイベントと聞くと年配の方が多いように思われますが、歎異抄大學には若い人たちが多く訪れ、プレゼンターも多くが30代40代の青年男女でした。居酒屋ブースでの哲学講座やトークセッション(語り合い)、歎異抄で人生が変わった感動の体験発表もあり、いずれも満席で、立ち見も目立ちました。

以下では内容の一部を紹介します。

「悪人正機」の真意に迫る 弁護士×『歎異抄』

弁護士の臼井元規氏は、「悪人」をテーマに講演。日頃は温厚で礼儀正しい“普通の人”が、様々な縁により犯罪者となりうる実例を紹介し、『歎異抄』でいわれる「悪人」とは誰のことか、その正しい意味を解説しました。

アインシュタインと仏教科学者×『歎異抄』

寺院出身で僧侶の資格もある大阪府の福村徹さん(仮名)は、多くの日本人が抱く宗教への偏見を覆し、アインシュタインをはじめ多くの世界的科学者たちが、仏教の教えの深さに驚嘆していることを紹介。その真髄が『歎異抄』にちりばめられていることを明快に語り、聴衆は固唾をのんで聞き入っていました。

現代科学に欠けているものを埋め合わせてくれる宗教があるとすれば、それは仏教です。

アインシュタイン

『源氏物語』との深い因縁 国語教師×『歎異抄』

奈良県在住の国語教諭・常田正代さんは、『源氏物語』と『歎異抄』との深いつながりを発表し、その斬新な視点は、来場した専門家をもうならせていました。

未来へつなげる い・の・ち医療×『歎異抄』

元プロレスラーの矢郷良明さん(富山県)は、難病と向き合う勇気を『歎異抄』から得たと語り、富山県の増本智彦さんは、「障害児の親として」と題して講演しました。

浄土真宗学院 仏語講座 仏教講師×『歎異抄』

オンラインレッスンの体験コーナーや、『歎異抄』に出てくる仏教の言葉「摂取不捨の利益」「往生」などを15分で解説する講座も、多くの人であふれました。

Tokyoの青年が仏説を熱く 専門分野×『歎異抄』

「仏教を聞くことによって、働くのは何のためか知らされました。心は縁によってどうにでも変わる、ブレない心でありたいと思い、常に仏教の教えに触れるよう、努めています」と話す、東京在住の為替トレーダー・齋藤裕士さん。


児童指導員の東京都の佐藤百華さんは、『歎異抄』を学び知らされた3つのことを発表。「何百年もの間、受け継がれてきた古典には、時代を超えて私たちを導く力がある」と訴えました。



東京都で介護支援の専門員として働いている田中藤子さんは、自宅に届いたチラシに書かれていた「なぜ生きる」の5文字が人生を大きく変えたと発表しました。

『歎異抄』を体感イベント

読む:パネル

『歎異抄』の原文や説明、称賛する著名人の言葉などを書いた、高さ2.3メートルのパネルが並び、多くの来場者の目を引きました。

書く:書道

歎異抄のお言葉を、プロに指導されながら書写していました。

食べる×語る

休憩スペースには何台ものキッチンカーや、弁当やコーヒーの販売もあり、ブースで聞いた内容を和気あいあいと語り合っていました。

『歎異抄』第一章冒頭・第七章のご講演

午後のご講演では、『歎異抄』で最も重要な1章冒頭の一文や、「念仏者は無碍の一道なり」で始まる第7章から話されました。

「弥陀の誓願不思議に助けられまいらせて往生をば遂ぐるなり」と信じて「念仏申さん」と思いたつ心のおこるとき、すなわち摂取不捨の利益にあずけしめたまうなり。

引用:『歎異抄』第一章

“すべての衆生を救う”という、阿弥陀如来の不思議な誓願に助けられ、疑いなく弥陀の浄土へ往く身となり、念仏称えようと思いたつ心のおこるとき、摂め取って捨てられぬ絶対の幸福に生かされるのである。

念仏者は無碍の一道なり。 そのいわれ如何とならば、信心の行者には、天神・地祇も敬伏し、魔界・外道も障碍することなし。 罪悪も業報を感ずることあたわず、諸善も及ぶことなきゆえに、無碍の一道なり、と云々。

引用:『歎異抄』第七章

弥陀に救われ念仏する者は、一切が障りにならぬ幸福者である。
なぜならば、弥陀より信心を賜った者には、天地の神も敬って頭を下げ、悪魔や外道の輩も妨げることができなくなる。犯したどんな大罪も苦とはならず、いかに優れた善行の結果も及ばないから、絶対の幸福者である、
と聖人は仰せになりました。

心も言葉も及ばない真実信心の世界を、参加者は真剣に深く学んでいました。

全国でのオンライン配信も

ご講演はインターネットで配信され、東京ビッグサイトに来場できなかった方も全国で同時に聞かれました。

700年の時を超えて、東京に歎異抄の街が

関東は、親鸞聖人がご布教なされた、仏縁深い土地です。

今年は親鸞聖人ご生誕850年の年であることもあり、親鸞聖人に関心を持つ多くの人が、東京ビッグサイトで『歎異抄』を通して、深く教えを学びました。

700年前、唯円が書いたとされる『歎異抄』は、今日なお多くの人を引き付けています。

『歎異抄』をまだ読んだことがない人も、読んだことのある人も、この機会に内容をもっと深く学んでいただきたいと思います。

次回は、11月5日に親鸞聖人の故郷である京都の「みやこめっせ」で開催予定です。

老若男女を問わず、幅広い来場者に楽しんでいただけるよう、ますます充実したイベントを企画しています。

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